仕事に限らず、新しいことを始める際は分からないことだらけで、誰もが不安を抱くことでしょう。
私自身、就職する前は医薬品業界やMRの仕事についてあまり知識がありませんでした。
実際に仕事をする環境で必要なスキルや知識を身に付ければ問題ないかと思いますが、少しでも役に立てばという考えから、新人MR向けにお勧めされている『MRのマナー手帳』(サイカス出版)を読んでみました。
本記事では、その内容と本書をお勧めできる人について紹介します。
各章の見出しと感想
ここからは各章の見出しと感想を簡単に紹介していきます。
第一章 医療現場からMRへ
この章では、医療関係者への実際のインタビューを基礎として、MRへの意見や求める姿が記述されています。
医師だけでなく看護師や薬剤師の声が掲載されており、複数の視点からMRに対する印象が記述されています。どのようなMRが信頼されるかのポイントが書かれ、自分が仕事をする上でも参考になると感じる箇所が多くありました。
一人のインタビューが数頁以内にまとめられていて、読み物として素早く進められる点がよかったです。
現場で働く人の意見は貴重だね。MRの客観的な評価を知ることで、仕事をするときの指針になるね！
第二章 MRが知っておきたい敬語
この章は、MRに限らずすべての社会人に必要な敬語の知識について書かれています。
日頃から敬語を使う人にとっては特別難しいことなく、通読するのが退屈に感じるかもしれません。
私は秘書検定2級受験のために敬語を学習していたので、新しい知識を得られることはありませんでした。難易度としては中学校の国語で習う敬語レベルと同等であると感じました。
「敬語を正しく使えている自信がない」という方以外は読み飛ばしても問題なさそうです。逆に、きちんと敬語を勉強し直したい方は他の書籍の購入をおすすめします。
第三章 MRが知っておきたいベーシックマナー
身だしなみ、挨拶、連絡といった基礎的な部分の他、席次、他社訪問、葬儀など社会人に必要なマナーが網羅的に列挙されています。
項目が多く、一つひとつの内容は非常に簡素です。
先ほどの敬語の章と同様、私は復習として読み進めました。社会人に必要なマナーを本格的に学びたい方は、本書ではなく秘書検定や実務関係に関する書籍を購入しましょう。
しかし、マナーは学習してことを実践して身に付くものです。
学生の間から知識を取り入れることは有意義なことですが、社会人になってからでも遅くないと思います。
基本的なマナーを身に付けたいのであれば、本をたくさん読むより接客を中心としたアルバイトをいくつか経験するとよいでしょう。
第四章 MRが知っておきたい生命倫理
この章では、医療に関わる者が心得ておくべき生命倫理が書かれています。
「医療倫理」という概念が誕生した経緯、これに反する医療事故や人体実験の事例、脳死に関する考え方などが簡単に述べられていています。
時間軸に沿って記述されているため、医療倫理の発達や現在直面している問題点を理解しやすい構成でした。
第二章、第三章に比べると有益な情報を多く得ることができました。
MR認定試験の科目で「倫理」が出題範囲に含まれていますが、より詳しく学習したい方は物足りなく感じるでしょう。
難しく考えず、気軽に読み進めよう〜
第五章 MRが知っておきたい統計用語
最終章では見出しにある通り、MRが知っておくべき統計用語について箇条書きで書かれています。
実務でどのように統計を使うか経験のない学生や新人MRにとって、単語と簡単な説明があるだけでは有益な情報とは言えません。
予習して知識を得ることが役に立つこともありますが、残念ながらこの章では実用的な知識を得ることはできませんでした。
現代はインターネットで様々な情報を入手できる便利な時代なので、中堅MRになってから統計用語を調べるために本書を見直すこともなさそうです。
この章は読み飛ばして他のことに時間を割く方が賢明かも…。
全体を通しての感想
第一章を読んで期待値が上がっていたので、その後に続く章はかなり初歩的で残念に感じました。
就職前に一般常識やマナーを学習したい方には秘書検定、実務という面では接客のアルバイトをお勧めします。
本書は定価¥1,300で販売されていますが、「書店で新品を買うほどの価値はない」というのが正直な感想です。メルカリを利用すると安く購入できるので、購入する際は中古で十分かと思います。
新書なので読みやすい点は評価できますが、実用的な知識が得られたかという観点では満足できませんでした。
「読書が苦手だけど、MRに関する本を読みたい」という方には向いている一冊かもしれません。