私は都内の私立大学に進学し、法学部で憲法や民法などの法律科目を中心に学びました。
途中で転学科したことや自信の怠惰が原因で一年間の留年を経験しましたが、製薬会社から内定を頂いて無事に就活を終えることができました。
本記事では、文系出身の私が製薬会社に就職できた理由と、製薬業界のことについて簡単に紹介します。
かなり初歩的な内容を目指し、難解な専門用語は省いたり説明を加えているので、就職・転職を希望している方はぜひ参考にしていただければと思います。
私が製薬会社を志望した理由
就職活動を本格的に始めた当時は、製薬会社への就職にあまり興味はありませんでした。
私は留年した関係で就活を2回経験していますが、どちらの期間も業界を絞らずに選考を受けていました。
3月のエントリー解禁直後は、自動車部品関連や化学メーカーを中心に応募していました。車が好きなので関連業界を見ていましたが、就活を進めるごとに、「趣味と仕事は別物」という考えが強くなります。
当初は営業職を避けていた
ある時期まで、私は営業職を避けたいという気持ちがありました。
新規飛び込み営業や一般家庭への訪問販売など、営業に対してノルマが課される、精神的に辛いなど、あまり良い印象がなかったからです。
しかし、考え方を改めてからは、かえって営業職を希望するに至りました。
参照:自分は営業に向いていないって言う人へ (Vol.233)
営業が売上(数字)の部分で会社に貢献し、評価される際の明確な基準となる他、管理職など上の立場では営業の視点が大切だと知りました。
顧客と関わりながら社内外で業界を俯瞰でき、より広い視野で物事を捉える力が養えるのは営業だと思います。
営業職は嫌だ!毎日ノルマに追われる、得意先には叱られ頭を下げる。そんな仕事やりたくない。約10年営業職やってるけど、案外楽しいよ!1日中外回りなので、時間の融通が利く。数字を上げれば昇給、ボーナスが増える。学歴などにとらわれずシンプルに数字で評価されやすい。営業職はおもろい仕事や!
— はやしょう (@Hayasyo1000) August 4, 2020
泥臭い努力をしながら力を付け、自分の市場価値を高めていくのが私のキャリア・プランの一つになりました。
選考を受ける中でMRという職種を知る
書類選考を通過して面接が始まる頃、業界研究や企業分析を行い、製薬業界のMRという職種を見つけました。
詳しくは後で記述しますが、メーカーなどの営業職と異なり、単に薬を医師や薬局に販売するだけでなく、情報提供や副作用の情報を収集することも業務内容に含まれます。
そのような特殊さに興味を惹かれたことに加え、医療に貢献したいという想いからMRを志すようになりました。
製薬会社の職種ついて
一般的に製薬会社の主な業務内容は、認可医薬品の創薬、開発、生産、市場販売です。
薬は私たちの健康を支える上で必要不可欠な物であるため、医薬品業界は比較的に景気に左右されにくいと言われています。
製薬会社は福利厚生が手厚く給料が高い傾向にあるので、就活生から人気の業界です。大規模な製薬会社に応募が集まり、入社倍率が高くなることが予想されます。
手厚い福利厚生、高給というだけでも就活生から人気なことが予想できるね。
製薬会社を大きく分類すると、医療用・一般用医薬品の開発や販売を行う新薬メーカー、後発医薬品の開発を中心に行うジェネリック・メーカー、経営に外国の資本が組み込まれた外資系製薬会社に分けれらます。
複数の事業領域を展開している企業もありますが、本記事では便宜的にこの分類で話を進めていきます。
新薬メーカーの特徴
新薬とは、「新規に開発された有効成分を含む医薬品で最初に販売される医薬品」のことです。
開発には巨額の資金と10〜20年の期間を要しますが、特許を取得すると原則20年間は独占販売をすることができ、開発した企業は大きな利益を受け取ることができます。
ただ、長期間の研究開発をしても成果が得られる保証はなく、国の認証までには治験や臨床試験など超えなければならない壁がいくつもあります。
国内で有名な新薬メーカーをいくつか挙げると、アステラス製薬、武田薬品工業、エーザイ、などがあります。
ジェネリック・メーカーの特徴
ジェネリックとは、新薬と同様の有効成分を含んでいて同等の効果があり、厚生労働省の認可を得て製造販売される医薬品のことです。
日本では少子高齢化の影響で2000年以降に国民医療費が膨張し、国は薬剤費削減と患者負担の軽減を目的としてジェネリック医薬品の使用を促進してきました。
2005年での国内ジェネリック医薬品普及率は30%程度でしたが、2022年現在では80%近くに達しており、国の対策に一定の効果があったことが認められます。
しかし、アメリカでの普及率は90%を超えており、日本はようやく医療先進国に足並みを揃えることができました。
国内ジェネリック・メーカーで有名な企業として、日医工、沢井製薬、東和薬品が挙げられます。
2021年、ジェネリック国内大手の「日医工」の品質管理が問題となり、業務停止命令とジェネリック製薬協会から5年間の正会員資格停止処分が下されました。
参照:【ジェネリック薬が不足】背景に「メーカーの不祥事」「業界特有の生産事情」薬局と患者の悲鳴 使用率は約8割(2022年2月1日)
ジェネリック医薬品は毎年行われる薬価改定で収益力が低下し、企業は生き残りを賭けて厳しい環境に置かれています。
外資系製薬メーカーの特徴
外資系とは「経営資本が海外の本社にある企業」を指し、外国企業の日本法人、共同出資、M&Aによるなど、いくつかのパターンがあります。
日系企業とは雇用形態、給与体系、福利厚生が大きく異なりますが、どちらを良しとするかは人それぞれです。
最近では、新型コロナワクチンを供給するアストラゼネカ、ファイザー、モデルナが一気に有名になりました。
新薬の開発が難しくなった現在は、製薬業界において国際的なM&Aの動きが加速しています。
研究・開発職の主な仕事内容
主な業務内容は、研究職では医薬品の製造を行い、開発職は国の認可を得るために必要な臨床試験を行います。
製薬会社の研究・開発職は就活生から非常に人気の高い職種です。
これらは高度な専門性が必要とされるため、修士卒でないとエントリーすらできない場合もある非常に狭き門です。
六年制の薬学部を卒業した学生は採用の対象になることがありますが、この職種で就職したい方は修士課程まで修了しておくのが盤石です。募集自体が少ないこと、人気であるために倍率が高いことも就職難易度に影響しています。
研究職は、大きく分けて以下の二つに分類することができます。
基礎研究の概要
一つは基礎研究と呼ばれるもので、中長期的に必要となる技術の基盤となるような研究を中心に行います。
参照:製薬産業の理解のために【第1章】基礎研究から非臨床試験まで
製薬会社は薬を作るだけでなく、その前の段階として創薬に必要な新成分や病気の原因解明などのために研究をしています。
バイオ・テクノロジーなど様々な科学技術を駆使した研究が実施され、近年ではゲノム情報の活用も加速しています。
研究の結果得られた新規化合物の化学構造や性状が調べられ、スクリーニングにかけて取捨選択されていきます。
応用研究の概要
応用研究とは、基礎研究で得られた成果を活かして企業の利益へと繋げていく研究のことです。
特に製薬会社においては、データを基に薬となる元素を探す探索研究、生成した化合物の効果を調べる非臨床研究がこれに該当します。
新規化合物の有効性と安全性をテストするため、動物や培養細胞を用いた研究が行われています。
MRの主な仕事内容
研究・開発職は理系の高度な専門知識を必要としましたが、メーカーによっては文系出身者でもなることができるのがこの職種です。
MRはMedical Representativeの略で、日本語に訳すと「医薬情報担当者」と呼ばれています。主な業務内容は、病院の医師や調剤薬局の薬剤師に自社製品の情報を提供することです。
薬の品質・効果・安全性に関する情報を医療従事者に正確に提供することで、自社の製品を通して医療に貢献することが目的です。
薬の価格は国の薬価基準制度によって定められているため、一般的な営業と異なり価格交渉はありません。
コントラクトMRとは
一口に製薬会社のMRと言っても、専門領域を担当するMR と幅広い領域の知識を有するMRなども存在します。
それに対して、コントラクトMRは製薬会社のプロジェクトごとに派遣され、CSO(Contract Sales Organization)という医薬品の営業をアウトソーシングするサービスを提供する企業に所属する者をいいます。
出典:【年収ダウン?】メーカーMRとコントラクトMRの違いを徹底検証!
経営のスリム化を促進するためにコントラクトMRを採用する企業が増加傾向にあります。
MRとして必要とされる資格
入社後に数ヶ月間行われるMR導入研修を経て、公益財団法人MR認定センターが実施するMR認定試験を受験します。
MRとして働く上で必須の資格ではありませんが、必要な専門知識を十分に保持していることの証明に用いられます。
試験科目は、「医薬品情報」「疾病と治療」「医薬概論」(医師・歯科医師・薬剤師は医薬概論のみ受験)の3科目です。全ての科目に合格すると認定証を取得することができます。
MR志望の薬学生必見!!!
【MR認定試験】
今まで製薬企業に所属する社会人しか受験できませんでしたが、2021年から薬学生も受験できるようになってたらしい!🤗(薬ゼミさんに教えて貰いました笑)MRを目指して薬学部に入ったあの頃なら絶対受けてました…泣
興味のある方は調べてみてね〜💊 pic.twitter.com/RE3uu7kB6k— 翔希@薬juku (@yakujuku2020) October 18, 2022
これに加え、入社して半年間は受験に向けた学習をしながら先輩に同行して実地研修を行います。
新規受験者の合格率は70~75%前後で推移、大手製薬会社では合格率90%を超える高い合格率が見受けられます。
MR認定試験対策はこちら。
医薬品業界で働くということ
製薬業界やそれぞれの職種について簡単に紹介してきました。
学生の多くは就活の際、企業の年収や福利厚生が気になると思います。しかし、そのような側面だけで企業選びをすることは止めましょう。
自分がやりたい仕事であるか、または活躍できるフィールドであるか、仕事を通してどのように社会貢献したいかが大切です。
医薬品は人の生命に関わるものであり、仕事には非常に大きな責任や法令遵守の姿勢が求められます。常に最新の知識を取り入れるために勉強することも欠かせません。
逆に、医療に貢献したい想いがあればこれらのことを含めてやりがいに感じられ、活躍できる人物に成長できるでしょう。